旅をするように生きよう – 立命館慶祥中高ハーバード大学研修プログラム

雑記



(ル・コルビュジェの晩年の作、ハーバードのカーペンター視覚芸術センターを前に)

こんにちは、Takaです。

少し前のことになりますが、2月26日、ハーバード大学研修プログラムでボストンを訪問中の立命館慶祥中学校、高等学校の生徒さんとお話させて頂く機会がありました。

ハーバード大学在学中の後輩君が日本の中高生の海外留学を支援する活動をしており、その関係で僕に声をかけてくれました。髙島君、貴重な機会を有難う。

頂いたお題は、以下のような僕自身の原体験に触れつつ、彼らの今後の学びや挑戦へのモチベーションを引き出して欲しいというもの。

  • ハーバード大学デザイン大学院(GSD)で学んだこと
  • アメリカの現地企業で働く中で気付いたこと
  • 金融から都市計画、デザインへシフトした理由

以下のTweetの通り、皆さんの訪問前はどんなことを話そうかワクワクしていました。

お話させて頂くのが研修最終日ということもあり、「自ら一歩を踏み出してチャレンジしよう」と思って貰える一つのきっかけになれば嬉しいなと考えていました。

当日は僕が2016-18年に在籍したハーバード大学デザイン大学院(GSD)のGund Hall内をご案内した後、座談会的な感じで生徒の皆さんとお話ししました。

以下では、僕がお話したことを備忘がてら記しておきたいと思います。この手のお話や講演会は、その都度自分自身の思いや熱量を掘り下げる機会になっていることもあり。

お伝えしたかったのは、「旅をするように生きよう」というメッセージになるのかと思います。

ポイントは大きく分けると3つ。

原体験をしよう


(ハーバードGSDの母艦、Gund Hall内をツアー)

座談会のスタートに当たり、生徒の皆さんにまずは一つの質問をお出ししました。
それは、「旅」という字について考えてみて下さいというもの。

この問いを出した理由は大きく2つ。それは、①色々なことに興味を持つこと、②固定概念から離れてopen-mindedな状態でいることの重要性を、「旅」という字を考えるという原体験を通じて体感して貰うためです。

興味を持つこと

「旅」とは「人」が様々な「方」々へ出向き、「化ける」こと。

9年前のブログ記事にも書いていますが、今から11年前、大学1年生になったばかりの私はオーストリアに一人旅をし、自分なりに「旅」という漢字について考えを巡らせていました。

それまで一人で海外へ行ったことなどなく、その旅自体は私にとってはちょっとした背伸び、チャレンジでした。しかし、約10日間の旅を通じ、自らアクションを起こし、自らの身体で経験し、自らの心で感じ、自らの頭で思考することの価値を学びました。

「原体験」こそ財産です。

究極的には、人は自分自身が経験していないものを自分の言葉で語ることは出来ません。色んな物事に興味を持ち、チャレンジし、原体験のストックを増やすこと。そうすれば、将来迷った時に引き出せる箱の数がたくさんあるはずです。それらを自分なりに消化し、自分の言葉で語ることだって、あるいは世のため人のために役立てることだって可能です。

今回生徒さんたちが北海道からハーバードに来られたことも大きな原体験。既に素晴らしい原体験をされている皆さんには、引き続き原体験を積み重ねて下さいとのメッセージをお伝えしました。もちろん、今回のプログラムにあたってお世話になった先生方やご両親にも感謝の気持ちを忘れずに。

固定概念から離れ、オープンでいよう

とは言え、色々な物事に興味を持つというのは案外難しいもの。ではどうすればいいか。それは一言で言うと、マインドフルな状態でいることだと思っています。

自分の心の在り方を柔軟にすることができれば、普段見ている外の世界が違って見えたりするものです。

例えば、「日本人は・・・でなければならない」であるとか、「みんな○○をしているから、私も○○しなければならない」と言った一面的な狭い視座。「旅」という字も一つの漢字として捉えればそれまでですが、因数分解したり何かを加えることで違った解釈をすることも可能です。

物事を柔軟に捉えることのできる、開かれた心の眼があれば、世の中に溢れる色んな物事に興味がわいてくるはずです。そして開かれた状態でいると、外の世界からこちらに「おいで。興味あるんでしょ?」と語りかけてくることもあります。もしかすると、その中には皆さんが本当にやりたいことも隠れているかもしれません。

この本にも同じようなことが書いてあり、先月うんうんと頷きながら読み終えたところです。英語のタイトルは「マインドフルネス」。ハーバード大学の心理学教授が書いたロングセラーで、固定概念で物事を一面的に見ることの弊害と共に、物事を多面的に捉える重要性が説かれています。生き方に向かい合うきっかけをくれるおススメの一冊です。興味を持たれた方は是非。

英語で読みたい方はこちらからどうぞ。

周りの目は気にしないでいい

僕は投資銀行でのキャリアから都市計画、デザインの分野に大幅にシフトした人間です。何なら、ハーバード大学デザイン大学院に進学する前には、投資銀行を辞めて半年程ニートをしていたことも。それ位、自分の感情の赴くままに生きています。笑

これまでの人生で、親や先生からあれをやれ、これをやれと言われたことはありませんし、強制されたこともありません。SFC時代のゼミ教授からは、井上は「感性の人間だからぶっとんでよろしい」と言われた程なので。笑

僕はこれまで常に自分の興味のあるものを追いかけてきました。そして、今の自分がいるのは、そんな僕のありのままを受け入れ、応援してくれる人々の存在があったからこそだと思っています。

ずっと同じ興味が続く人もいれば、ライフステージや何かのきっかけによって興味が変わる人もいると思います。

好き勝手にやってきた僕だからこそ、人生には単一の答えなどなく、色んな歩み方があっていいということをお伝えできればと思っていました。

学校、キャリア、恋愛や結婚。日本だと平均から乖離する人たちは変わった目で見られることが多いです。でも、文句やネガティブなコメントをする人も結局は他人。口出しはしても、自分の人生を生きてくれるわけではありません。

あなたの人生のドライバーシートに座るのはあなた自身だよと。そのためには、周囲の面倒な声は気にせず、自分の内にある声に耳を傾けた方が自分らしく生きられるよと。そんなことが立命館慶祥の皆さんに伝わっていれば幸いだなと思っています。

継続は力なり – 背伸びは背伸びじゃなくなる

生徒さんからは沢山の質問が出ましたが、その中でも一つ印象に残っているのが以下。

努力だけで才能を凌駕できるものでしょうか?

例えば、あなたが血の滲むような努力をしてそれなりにピアノが弾けるとしましょう。それこそ一日10時間練習とか。他方、さほど練習していないにも関わらず、色んな賞を総なめにしているずば抜けた才能の持ち主がライバルにいるとしましょう。

でも、もしその人が違う物事に興味を持ち、ピアノを辞めたとするとどうでしょうか。チャンスですよね。

「頑張っている人にチャンスは巡ってくるんだよ。」

とはSFC時代にお世話になったもう一人のゼミ教授に頂いた言葉ですが、頑張っているとチャンスが巡ってくることは結構あります。「人事を尽くして天命を待つ」とはよく言ったものだなと。

意外にも、やり続けていれば、周りには誰もいなくなっていたなんてこともあるものです。はなから自分の能力の低さを言い訳に諦めているようでは決してチャンスは巡ってきません。それほどのパッションしか無いという見方もできますが。他方、自分の興味のあることに真正面からぶつかり、興味を失わずに継続していれば、思ってもみなかったグッドニュースが待っているかもしれません。

僕のような、まだ何も成し得ていない人間が到底言えることではないのですが、継続した人間にだけ見える世界は確実に存在しています。

選ぶことは捨てること

これは僕の高校時代の強烈な原体験から来ています。

高校2年生の僕は度重なるケガでラグビーを続けるか迷っていました。
と同時に、生徒会活動や外部受験への興味もありました。

周囲からは井上ならばどちらも両立できる、そう言われていました。中学から一緒にプレーしてきた仲間と花園の夢を追うことを諦めるのは決して容易ではなく、悩みに悩みました。退部することは裏切りのように思われました。当時は多感な学生ですから、仲間からよく思われないだろうなという不安も強かったものです。

一人で悶々とする日々が続き、これでは埒が明かないと担任に相談に行った際に言われたのがこの一言です。

「井上、選ぶことは捨てることなんだよ。」

まるで後頭部をガツンと殴られたような感覚。けれども、肩の荷がすっと落ちるような、救われるような感覚もある。その両者が入り混じる中で僕は担任に背中を押してもらったのだと感じました。

どの道を選ぶかではなく、選んだ道をどう歩むか

退部の決意を固め、一つ上の日本代表に選ばれていたキャプテンに伝えた際、彼はこう言って送り出してくれました。

「大切なのはどの道を選んだかちゃうから。選んだ道をどう歩むかやで。頑張れよ。」

その後の僕は生徒会長をやったり、数学研究をやったり、SFCを受験したりと選んだ道で努力してきました。ラグビーを辞めてよかったんだろうかという葛藤もありましたが、悩みや不安を見せているようでは送り出してくれた人たちに示しが付かないと自分なりに選んだ道を歩んできました。まさに、がむしゃらの一言だったと思います。

振り返って言えるのは、今の自分は選択と集中、決断と実行の積み重ねの上にあるということです。換言すると、あの多感な高校2年の時にラグビーを辞める決断をしていなければ、全く違った人生を歩んでいたと思います。

中高生という多感な時期を過ごす皆さんにとっては酷な言葉かもしれない。でも、だからこそ、夢や理想だけ大きく語るのではなく、現実的な思考のオプションも持っておいて欲しい。

そして、何かを選び、何かを捨てることは逃げではない。選んだ道に責任を持ち、歩む限りにおいては。そんなことをお伝えしたく、自身の原体験と共に「選ぶことは捨てること」というメッセージをお渡ししました。

余談ですが、ラグビーを諦められなかった僕はエディンバラ大学留学中に再度チャレンジします。笑

この辺りは2011年のこちらの記事に書いています。結局、2メートル位ある相手選手にタックルして左肩の靭帯を切ったのですが。確か対戦相手はセント・アンドリューズ大学で、ホームグラウンドでの試合だったように記憶しています。当時心配をかけた親や友人には申し訳なく思います。

そして、途中で退部したにも関わらず今でも食事や集いに声をかけてくれる中高ラグビー部の同期、先輩や後輩には本当に感謝しています。


(熱心な学生さんたちから僕も元気を頂きました。有難う)

おわりに

以上、当日お会いさせて頂いた学生さんへのフォローアップと自分の振り返りも兼ねてつらつらと書きました。気付けば5,000文字にもなってしまいました。汗

以下は、参加生徒さんからのフィードバック。少しでも皆さんの参考になるようなお話が出来ていたのかな?そうであれば嬉しく思います。

「井上さんの話を聞いて、経験したことのないようなことに飛び込むことの重要さや、周りの目を気にすることなく自分の本当にやりたいことに挑戦し続けることの大切さを、学ぶことができました。」
出所: 立命館慶祥中学校・高等学校HP

今回の機会は、僕自身にとっても、目のキラキラした、心根の綺麗な生徒さんたちから多くを学ばせて頂く貴重な時間となりました。

ボストンでお会いした生徒さんのこれからの歩みを陰ながら応援しています。

長くなりましたが、最後までお読み頂き有難うございました。

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