ポール・モーリアの思い出 – ピレネーの懐に抱かれて③ (最終章)

雑記


この夏、私は南仏ペルピニャンの地を踏んだ。ポールの眠る街だ。
ポールが好き。
たったその理由で大学から始めたフランス語だが、勉強してみると意外にも面白くこの夏パリから約1時間半ほどの所にあるルーアンという街でフランス語の語学研修を受けていた。

週末の休みを利用して私はペルピニャンへ向かった。
万感の思いを胸に、片道7時間をかけて彼の眠る土地へ向かった。
やっと会える。 やっと話せる。 大好きな彼にようやく会える。
TGVの車内で私の思いは揺られながら次第に大きくなっていった。

風の強い日だった。夜行列車だったので、ペルピニャンには朝に着いた。
ホテルに荷物を預け、シャワーも浴びずすぐにタクシーに飛び乗った。

向かう先はペルピニャン南墓地。ポールのいる場所だ。

墓地の中に彼の名前を見つけたとき、涙が自然と溢れた。

「やっと会えた。」

1時間半ほど居ただろうか。私は彼のお墓の前でむせび泣いた。
とことん泣こう。そう決意した私はi-Podのスイッチを入れた。

途中一度だけ彼の声が聞こえたような気がした。
笑い声だった。
「来てくれてありがとう。」
そんな風に聞こえた。一瞬、風がやんだ。彼の笑顔が頭に浮かんだ。

「何泣いてんねん、自分。俺、ポールにありがとうを言うために来たんやったわ。」
そう思い直した私は、骨と灰だけになってしまった彼と話をした。

そしてたくさんのありがとうを伝えた。母親の分も、きちんと伝えた。

誰にも忘れられない想い出がある。きれいな、きれいな想い出がある。
そんな胸に秘めた想い出を美化することもたまには悪くない。

帰り際に足を延ばした地中海で、一人そんな感慨に浸っていた。

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