Tanglewood音楽祭 – バークシャーの野に舞う蛍

アメリカ生活


アメリカはボストンから西に約2-3時間走ったところに、Tanglewood (タングルウッド)はある。マサチューセッツ州バークシャー群レノックスに位置する丘陵地帯で、世界的に有名な音楽祭であるタングルウッド音楽祭の毎夏の開催地である。

タングルウッド音楽祭とは ?

タングルウッド音楽祭は毎年6-9月に渡って開催される世界的に有名な音楽祭で、その歴史は1937年に遡る。夏の間、クラシック、ジャズ、ミュージカル、ポップなど多様なジャンルの音楽がバークシャーの美しい自然の中に響き渡る。

尚、この音楽祭はアメリカ5台オーケストラの一つ、ボストン交響楽団 (Boston Symphony Orchestra、以下BSO)がレジデンス・オーケストラを務めることでも有名。

ボストンの夏は暑い。都市部に比べ標高が高く、少し車で走れば湖がある。そんな避暑地での癒しを求め、人々は都会の喧騒を離れ、タングルウッドを訪れる。

音楽堂のデザイン – あいまいな境界が醸成する場の一体感

Koussevitzky Music Shed
通称Shed (小屋の意)と呼ばれ、BSOの発展に尽力した音楽監督Koussevitzkyの名を冠したコンサートホール。扇形で、壁がなく、内部空間は外側に広がる芝生スペース (Lawn)と緩やかに接合する。

Seiji Ozawa Hall
BSOの音楽監督を務めた、かの有名な小澤征爾の名を冠したコンサートホール。
こちらは後方のみだが、外側のLawnに向かって開かれた設計で、これもまた境界のグラデーションの付け方が見事である。

楽しみ方 – 自然の中に没入しながらリフレッシュ

(奥に見えるのがShed)

(コンサートまでの時間、子どもたちが芝部の上を走り回りシャボン玉で遊んでいた)

おススメはLawn席、芝生の上での音楽鑑賞。
タングルウッドの丘の上、心地よい風に吹かれながら、名演奏に心を傾ける。

ある人は木陰で読書をしながら
ある人は家族、親しい友人、あるいは恋人とピクニックをしながら
ある人は芝生の上で昼寝をしながら

ここでは各々がありのままに、思い思いの時間を過ごす。アメリカでは珍しくアルコールの持ち込みも可能で、軽食を食べつつ、ワインやビール等を飲みながら音楽を楽しむことができるのもタングルウッド音楽祭の醍醐味。

尚、コンサートチケットは約$20で、当日ボックスオフィスでも購入が可能。リハーサル公開のチケットは少し安い$15前後。
駐車場は無料だが、演奏後は込み合うので注意が必要。

バークシャーの野に舞う蛍

私が訪れたのは7月13日、アンドリス・ネルソンスがタクトを振るガラ・コンサート。夜8時から、「怒りの日」で有名なヴェルディのレクイエムを聴いた。

2020年のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを指揮するアンドリスの指揮のもと、BSO、4人のオペラ歌手、タングルウッド音楽祭コーラスが織り成す重層的かつダイナミックな音色を楽しんだ。バークシャーの麗しい大自然の中、芝生の上で寝転びながら至高の音楽に心と全身を委ねていく体験。こんな幸せはない。

豊かな自然と麗しい音楽に没入していたからだろう。
気づけば陽は沈み、空いっぱいに星が輝き始めた。

そして演奏も終盤に差し掛かった頃、柔らかな光が目の前を舞った。
太陽が沈むのと入れ替わるように現れた一筋の幻想的な光。

タングルウッドの2つの音楽堂が外と内の境界をぼかしたように、生と死の境界も意外とグラデーションなのかもしれない。光と闇。生と死。そういった単純な二元論では説明が難しい世界の存在。ヴェルディがレクイエムで描こうとした世界は鎮魂を超えたその先、まさに生と死の境界、その連関性への問いかけにあったのではないか。暗闇の中で明滅する緑色の小さな光を見つめながら、そんなことを考えていた。

念の為、昨年2018年夏、8月25日のガラ・コンサートのライブ映像のリンクを置いておきます。タングルウッド音楽祭に興味を持たれた方、音楽好きの方は是非。

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