ケンタッキーでバーボントレイル? – ⑤ウッドフォードリザーブ蒸留所

アメリカ生活


こんにちは、Takaです。

バーボン蒸留所訪問記の最終回となるこの記事では、ウッドフォードリザーブ蒸留所 (Woodford Reserve)についてご紹介したいと思います。

結論から言ってしまうと、私が今回訪れた蒸留所の中で断トツでした。
また訪れたいと思ったのはウッドフォードリザーブのみです。

蒸留所の立地、ツアーコンテンツ、観光施設群の適切な配置とツアー導線の美しさ、ブランディングの統一感、デザインの美しさ等ひっくるめて断トツでした。

過去4回と同様、ブランドの歴史を軽くおさらいした上で実際の蒸留所ツアーについてご紹介しています。ツアーだけ知りたいという方は前半部は読み飛ばされてください。

では、早速見ていきましょう。

ウッドフォードリザーブとは?

ウッドフォードリザーブはケンタッキー州ウッドフォード群ヴァーセイルズで製造されるスモールバッチ(少量生産)バーボンです。

実はこの地はサラブレッドの産地としても有名で、ウッドフォードリザーブは1999年以来、ケンタッキーダービーのオフィシャルバーボンとしても知られます。

車で向かう途中、一面に広がる牧草地帯に競走馬らしき馬を何頭か見かけました。バーボンの仕込みにも使用される石灰岩の多い硬水は、サラブレッドを育てる牧草「ケンタッキーブルーグラス」の生育にも最適だそうで、骨の丈夫な馬が育つとのこと。

尚、ウッドフォードリザーブ蒸留所は現存するケンタッキー最古のバーボン蒸留所とされています。事実、当該蒸留所はアメリカ合衆国国家歴史登録財及び国定歴史建造物にも指定されている程です。

現在当該ブランドはブラウン・フォーマン社が所有しており、日本への輸入販売はアサヒビールが行っています。

ウッドフォードリザーブの歴史

ウッドフォードリザーブの歴史は1812年に遡ります。

もとは「オールド・オスカー・ペッパー蒸留所」として設立され、紆余曲折を経て今の「ウッドフォードリザーブ蒸留所」という名前になりました。

1878年には経営権の委譲から「ラブロー・アンド・グラハム蒸留所」と名を変え経営が続けられました。その後、1941年にはブラウンフォーマン社が買収、1970年代前半まで製造が続けられました。しかし採算がとれなくなったことから蒸留所は1972年に閉鎖、近隣の農家へ売却されました。

その後20余年の月日を経て1994年に再度ブラウンフォーマンが買収、再建に従事。2003年に「ウッドフォードリザーブ」という名前に改称されて今に至ります。

ブラウンフォーマンによる買収?

これまでご紹介した通り、世界のプレミアムスピリッツ市場では大手によるブランドの買収、ポートフォリオ拡充が進んでいます。

ウッドフォードリザーブも例に漏れず、先にご紹介した通りブラウンフォーマンの傘下にあります。

これまでご紹介したものと併せてまとめると以下の通り。ブラウンフォーマンの創業当時からの看板商品であるオールドフォレスターを除くと、他は全て他社によって買収されたブランドとなっています。

  • ジムビーム:サントリー(2014年~)
  • エンジェルズエンヴィ:バカルディ(2015年~)
  • オールドフォレスター:ブラウンフォーマンの看板商品
  • フォアローゼズ:キリン(2002年~)
  • ウッドフォードリザーブ:ブラウンフォーマン(1994年~)

ウッドフォードリザーブ蒸留所ツアー

さあいよいよお待ちかねの蒸留所ツアーのご紹介です。上記の敷地図の通り、雄大な自然の中にある郊外型の蒸留所であることがお分かり頂けるかと思います。

建築群の配置、導線設計もしっかりなされていることが一目瞭然かと思います。大きな道路を挟んで上が実際の蒸留所群、下にウェルカムセンターという配置になっています。

これはウェルカムセンターの受付。訪問客がまず到着し、ツアー予約をするのがここになります。ブランドアイデンティティのつくりこみ、見せ方等々久々にやられました。

ルイヴィル市内から車で一時間程度の距離がある郊外型の蒸留所故、ウェルカムセンターに着いた際のインパクトは大でした。

こちらは蒸留所群のある敷地の入口。
専用バスでここを通過し、いよいよツアーの始まりです。

先にご説明した通り、アメリカ合衆国国定歴史建造物(National Historic Landmark)との表記もあります。

美しい赤レンガ造りの蒸留施設がすぐ目に飛び込んできます。
青と緑の優しい世界とのコントラストもたまりません。

蒸留施設群のすぐ裏にはGlenns Creekという清涼な小川も流れていて、空気も透き通っていました。

ウッドフォードリザーブの特徴は何といっても蒸留の仕方にあります。

上記の写真が示す通り、ウッドフォードリザーブでは単式三回蒸留を行っています。これはスコットランドでシングルモルトを造る際によく用いられる手法で、過去に訪れたスコットランドの蒸留所でよく目にしました。

トウモロコシやライといった原料由来の豊かなフレーバーを引き出すために手間のかかる単式蒸留が採用されているそうです。尚、連続式蒸留が主流であるバーボン蒸留所の中で単式蒸留を行うのはウッドフォードリザーブだけなんだとか。ウッドフォードリザーブの味わい、品質へのこだわりを感じました。

ツアーガイドのおじさんが蒸留過程について丁寧に説明してくれました。このガイドさん、どこかカーネルサンダースを彷彿とさせます。笑 とても気さくな方でゲストの質問にも親身に答えて下さいました。

彼が手に持っているのは樽詰め前の原酒。樽詰め前は無色透明な液体なのだよということを教えてくれます。

続いて蒸留した原酒を、内側を焦がした新品のオーク樽に詰める工程を見学。

樽は上記のような感じで貯蔵庫まで専用レールで運ばれます。石灰岩のブロックで建てられた独特の貯蔵庫が印象的でした。

決して近代的とは言えない貯蔵庫ですが、分厚い石灰岩は保湿性に富み、温度管理がしやすいのだとか。蒸留、製造工程の随所に古参の意地、プライドを感じました。

これは貯蔵庫の内部。ここで熟成され、樽のチャーリングなどにより「命の水」は琥珀色へと姿を変えていきます。

熟成が終わったら瓶詰、ラベリングの工程ですね。

最後はお待ちかねのテイスティング。3種類に加えチョコレートまで。

ラインアップのフレーバーの違いに関するレクチャーはもちろんのこと、チョコレートとのマリアージュについても学ぶことができ、大満足でした。

ツアー最後はお決まりのギフトショップ。

世界観を存分に楽しんで貰った後にバーボンや関連グッズ販売で収益を上げる。
テーマパークと同じ、お決まりの導線設計ですね。

ツアー内容が平凡だと余り購買意欲はそそられませんが、これだけのツアーをされたらほとんどのビジターが何かしら買ってしまうと思います。多くの訪問客で賑わっていました。

瓶詰されたポン酢も売られていました。よく見るとBluegrass(ケンタッキーの牧草のこと)とありますね。オールドフォレスターでも瓶詰されたてりやきソースが売られていたので、もしかしたらこれはブラウンフォーマンのアイデアなんでしょうかね?

感動をつくるツアー

ツアーを終えてみて、ブラウンフォーマンはウッドフォード蒸留所ツアーのトータルコーディネートに相当力を入れているなと感じました。ビジターのエクスペリエンスを最大化する施設群の敷地計画、導線設計、ツアーガイドの人選などなど。本当にあっぱれでした。

郊外型蒸留所としてはジムビームフォアローゼズにも足を運びましたが、ウッドフォードリザーブ蒸留所での経験はまるで格が違いました。断トツです。

そう言えば、久石譲さんがご自身の音楽づくりに対する姿勢、思いについて綴られた『感動をつくれますか?』という本があります。

この本の中に以下のような下りが出てきます。

宮崎さんが「(その映画を見終わったら)1階から入った人が2階から出てくるような感じになるといい」といっていたことがあった。僕も同感で、勇気が出たとか、一つ賢くなったとか、何かプラス材料になるものを得てほしいという願望がある。
引用:久石譲『感動をつくれますか?』(角川書店、2006年)

ウッドフォードリザーブでのツアー経験は、まさに1階から入ったのに2階から出てきたような感覚を与えてくれました。

実は私、コンサートにもよく行くほど彼の音楽が好きで、高校生の時に初めて出会って以来この一冊は大切にしています。以来、私も人生で関わる人々、ユーザーやクライアントの経験の最大化は心がけてはいるものの、これが中々上手に行かないものです。汗 私自身もまだまだ未熟なので、引き続き頑張って行こうと思います。

すみません、最後に若干話がそれてしまいましたね。バーボンのツアーエクスペリエンスから宮崎さん、久石さんの話に発展しました。笑

ですが、ご興味のある方、特にクリエイターの方には久石さんの本を一読されることを強くおススメします。

個人的おススメボトル3選

最後におススメボトルを3つご紹介しておきますね。
気になるものがあれば、是非手に取られてみて下さい。

ウッドフォードリザーブ 750ml

created by Rinker
WOODFORD RESERVE(ウッドフォードリザーブ)

こちらはウッドフォードリザーブのラインアップの中で一番スタンダードなものになります。スコッチが好きな方はおそらく好きだろうなと思います。

香りはバニラや焼きリンゴの芳醇さが目立ち、個人的には甘味のあるなめらかな味わいが好みの一本。オレンジピールのようなヒントもあり、甘美でありつつさっぱりとした印象も受けます。

スモールバッチなのでジムビームやフォアローゼズに比べるともちろんお値段はしますが、価格だけあります。スタンダードボトルではありますが、極めて上品、かなりクオリティが高いです。

ウッドフォードリザーブを初めて飲む方は是非スタンダードボトルから飲まれることをおススメします。

ウッドフォードリザーブ ダブルオーク 700ml

created by Rinker
WOODFORD RESERVE(ウッドフォードリザーブ)

こちらは熟成を終えたウッドフォードリザーブを、ホワイトオーク樽で約1年間追熟したもの。

2つ目の樽は通常の熟成樽よりも4倍長い時間トーストし、燃焼しないギリギリの5秒間のチャーリング(焦がし)が加えられたこだわりもの。

キャラメルやメープルシロップの甘さや、焦がしによるビターな香ばしさが印象的な一本。口当たりはまろやかですが、スタンダードに比べてもちろん深み、重みは増します。

ウッドフォードリザーブ ライ 750ml

created by Rinker
WOODFORD RESERVE(ウッドフォードリザーブ)

こちらはライウイスキー。ライ特有のスパイシーさは勿論ありますが、リンゴ、ハニーやシナモンのような甘味もあるのでライが苦手な方でも飲みやすい一本だと思います。

イメージは「かなり濃い紅茶」といったところでしょうか。甘すぎず、苦すぎず。そんな塩梅を楽しみたい方におススメの一本かなと思います。

最後に

全5回となったバーボントレイル訪問記、いかがでしたでしょうか?
これから蒸留所を訪問される方にとって少しでも参考になる情報が提供できていれば幸いです。

次回記事ではおまけとして「バーボニズム」なるものをご紹介したいと思います。
これは、バーボンとツーリズムを掛け合わせた造語になります。是非お楽しみに。

最後までお読み頂き、有難うございました。

※記事の情報は2019年9月22日時点の情報です。

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