ケンタッキーでバーボントレイル? – ④フォアローゼズ蒸留所
こんにちは、Takaです。
バーボン蒸留所訪問記の第4回目となるこの記事では、フォアローゼズ蒸留所 (Four Roses)についてご紹介したいと思います。
フォアローゼズとは?
フォアローゼズはケンタッキー州ローレンスバーグで蒸留製造されるバーボンで、数あるバーボンの中でも屈指の歴史を誇ります。
日本でも比較的認知されている銘柄だと思います。それもそのはず、フォアローゼズは2002年からキリンホールディングスの傘下にあり、割と流通していますよね。
逆にアメリカ国内では流通が少なく、例えば私が住んでいるマサチューセッツ州のリカーショップではほぼ見かけません。
4本のバラ?
フォアローゼズ。4本のバラ。
何ともお洒落なブランド名ですよね。
実はこのブランド名の背景には一つのロマンティックなエピソードがあるそうです。
創業者のポール・ジョーンズJrはとある舞踏会で出会った女性に一目ぼれしプロポーズします。すると彼女は「返事は次の舞踏会まで待って下さい。プロポーズを受ける場合は胸にバラのコサージュを着けてきます」と返答。そして後日、黒いドレスを着た彼女は胸に4つの真紅のバラのコサージュを着けて現れたのだとか。
何ともロマンティックなストーリーですよね。フォアローゼズという名前、そして4本のバラのラベルはどうも愛の結実を示しているということみたいです。
フォアローゼズの歴史
フォアローゼズの創業は1888年に遡ります。創始者は前述のポール・ジョーンズJr (Paul Jones Jr)。
美しいスパニッシュミッションスタイルで知られる現在の蒸留所は1910年に建設されました。このあたりのことは写真も交えつつ後述しますね。
前回ご紹介したオールドフォレスター同様、フォアローゼズは1920年から1933年の禁酒法時代にも薬品としてバーボンを蒸留・製造するのを許されていたブランドとしても知られています。
対して最初にご紹介したジムビームなんかは禁酒法時代はバーボンの蒸留製造を許されませんでしたから、数あるバーボン銘柄の中でも歩んだ道のりはそれぞれだということがお分かり頂けるかと思います。
1943年にはカナダのシーグラム社がフォアローゼズを買収。同社の戦略によりフォアローゼズはストレートバーボンでなくブレンデッドとして位置付けられ、同ブランドはアメリカ国内での流通が停止されました。
アメリカ国内での流通復活は1994年。そこに至るまでの約40年間はアジア及び欧州市場で流通していたとは言え、アメリカはケンタッキー発祥のバーボンであるフォアローゼズにとっては苦難の歴史だったことは間違いありません。
その後2002年にキリンがフォアローゼズを傘下に収め現在に至ります。キリンは富士山近くに御殿場蒸留所を所有しており、日本向け商品の一部はそちらでボトリングされているのだとか。
フォアローゼズ蒸留所を訪れる
(スパニッシュミッションスタイルの建築とバラ)
フォアローゼズ蒸留所は郊外型の蒸留所になります。ルイヴィルから車を1時間程走らせたローレンスバーグ郡にあります。
着いて真っ先に思ったのは、建築群が美しいということ。
フォアローゼズ蒸留所の建築はスパニッシュミッションスタイルで統一されています。18世紀から行われたカトリック伝道の拠点となった修道院の建築様式にちなむもので、クリーム色外壁とスペイン風の赤瓦が特徴です。カリフォルニアに多い建築スタイルとされています。
実はこれ、私が中高時代を過ごした関西学院の建築スタイルと同じでなんだか懐かしくなりました。関西学院はウィリアム・メレル・ヴォーリズ (William Merrell Vories)という建築家の設計で、中高時代には先生からたまにヴォーリズ建築の美しさについての談話があったりしました。
ヴォーリズは関学に留まらず神戸女学院の建築群もデザインするなど、キリスト教の学校が多い阪神間地区ではスパミッシュミッションスタイルに馴染みのある方も多いはずです。
(ビジターセンター入り口)
トレードマークのバラが敷地内の至るところに植えられています。
(ビジターセンター横にある離れのような空間)
天気もよかったので、ここでゆっくりとされているビジターも目立ちました。
郊外型蒸留所だからこそできる豊かな空間の使い方だと思います。
(蒸留所併設のショップ内部)
店内にも大量のバラが飾られており、ブランディングが一貫している印象を受けました。
(蒸留所ツアーの終着点でもある試飲バー)
ここではフォアローゼズで製造されている10種類の原酒についての解説がありました。
(10種類の原酒についての解説パネル)
このパネルにあるように、2種類の原酒と5種類のイーストの組み合わせで10種類の原酒が造られているようです。奥深いですよね。
解説を聞いた後にはお待ちかねの試飲。ここでは4種類を飲ませてもらいました。底面にバラのマークが刻まれた試飲グラスもお土産として貰えましたよ。
(アメリカ限定販売のスモールバッチセレクト)
こちらは、試飲で気に入って私が購入したスモールバッチセレクト (Small Batch Select)。フォアローゼズ蒸留所では10種類の原酒が生産されており、そのうち最低6年の熟成を経た6種類をブレンドしたブレンデッドバーボンになります。
アメリカ限定販売のボトルで日本では未発売です。加えて、アメリカ国内でも販売されている州が限定されています。2019年に蒸留所を訪問した際はケンタッキー、ニューヨーク、カリフォルニア、テキサス、ジョージアの5州に留まると教えて貰ったのですが、2020年7月1日時点では計18州まで販売が拡大されているようです。
お値段は確か$60 (6,000円強)くらいで、価格だけあって美味しかったです。
今後蒸留所を訪問される方は是非手に取られてみてください。
個人的おススメボトル3選
今回もおすすめボトルを3つご紹介しておきますね。
気になるものがあれば是非味わってみて下さい。
フォアローゼズ 700ml
こちらはフォアローゼズのラインアップの中で一番スタンダードなものになります。1888年のリリース依頼、バーボンファン、ウイスキーファンに愛されてきた一本。
1,500円という値段の割に繊細で非常にコスパが良いです。全体的に上品にまとめられており、フローラルな香り、甘さとまろやかな飲み口が特徴だと思います。少し加水してあげるとより甘美な芳香が立つ印象です。
これからバーボンに挑戦してみようかなと考えている方におススメできる一本です。
フォアローゼズ ブラック 700ml
こちらはフォアローゼズの上級ラベル。私の個人的なおススメはこれです。
スタンダードに比べ芳醇な香り、味の重厚感が一気に増します。キャラメルやチョコといったビターな甘さとシナモンのスパイシー感の交錯。その二面性が人生の機微やアップダウンを表しているかのようで、個人的には夜をゆっくり楽しみたいときに飲む一本です。
黒ラベルに真っ赤なバラというデザインも秀逸で、スタンダールの『赤と黒』が想起されるのは私だけではないはず。
立身出世を目指し静かに燃えたジュリアンの成功や挫折は、古い価値観や既得権益に立ち向かう難しさと、それでも立ち向かう意義を教えてくれたような気がします。・・・と話しがそれましたが、複雑かつ余韻の長い味わいの中でそんなことを考える夜もたまにはいいものですよね。
お値段は3,000円強とスタンダードの約2倍になりますが、その価値は十分にあります。是非試されてみて下さい。
フォアローゼズ シングルバレル 750ml
シングルバレルという名前の通り、一つの樽からボトリングされるボトルです。モルトウイスキーで言うシングルカスクと同じです。要はブレンドではないということです。
熟成期間も最低6年以上とバーボンにしては長く、品質や香り、味わいが保証されたものだけが選ばれてボトリングされます。そのため数は少なく、価格も上述の2つに比べると少し高くなります。
チョコレートやキャラメルの甘い香りとフローラルな芳香、チェリーやアプリコットといったフルーティーな味わいが印象的な一本。余韻も心地よく、個人的には非常に完成度が高いと思います。
価格、クラス共に先にご紹介したアメリカ限定のスモールバッチセレクトと同等程度の位置付けになるかと思います。
最後に
今日はここまで。いかがでしたでしょうか?
最終回となる次回はウッドフォードリザーブ蒸留所についてご紹介します。
ネタばれになってしまいますが、ウッドフォードリザーブは今回訪れた中で断トツ1番の蒸留所でした。お楽しみに!
最後までお読み頂き、有難うございました。
※記事の情報は2019年9月22日時点の情報です。
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