ケンタッキーでバーボントレイル?
(ルイヴィルで訪れたバーで出会ったお洒落なメッセージとライティング
“it’s all about the whiskey“)
こんにちは、Takaです。
少し前のことになりますが、昨年2019年の9月にケンタッキー州でバーボントレイル (Kentucky Bourbon Trail)巡りをしてきました。
金曜日の仕事上がり、夜のフライトでボストンからオハイオ州シンシナティに入り軽く市内を散策。シンシナティで一泊した後、土曜日と日曜日の夕方頃までを使いレンタカーでケンタッキー州に散らばる蒸留所を巡るという弾丸旅行でした。
全部で17の蒸留所を巡ることができるのですが、私はお目当てだった以下の5つに足を運び、後はルイヴィル市内 (ケンタッキー州)で街歩きを楽しみました。それでもかなり詰め詰めで行動した記憶がありますが汗
- ジムビーム蒸留所 (Jim Beam)
- エンジェルズエンヴィ蒸留所 (Angel’s Envy)
- オールドフォレスター蒸留所 (Old Forester)
- フォアローゼズ蒸留所 (Four Roses)
- ウッドフォードリザーブ蒸留所 (Woodford Reserve)
尚、ルイヴィル、シンシナティやテネシー州のチャタヌーガはリバーフロント再生の好事例として知られています。都市計画・デザインを学ぶ方やそれを生業とする人たちには是非訪れて頂きたい都市です。バーボンを巡る旅が主題でしたが、素晴らしい都市の事例を見ることも副題でした。さて、話がそれました。
この記事では、私とウイスキーの出会いやそもそもバーボンとは何ぞや?というお話をしたいと思います。
(次回以降の記事では実際に訪れた蒸留所をご紹介していきますよ。)
私のウイスキーとの出会い
(2012年に訪れた港町のオーバンで。蒸留所の煙突がひと際目を引きます)
バーボンの話に入る前に、まず私のウイスキーとの出会いについてご紹介します。
私のウイスキーとの出会いは今から10年も前、スコットランドのエディンバラ大学に留学していた頃のことです。
そもそもウイスキーという言葉はかつてスコットランド民族であるケルト人が使用したゲール語の「uisge beatha」に由来し、ラテン語で「命の水」を意味します。
余談ですが、スコッチは英語だとwhisky、アイリッシュウイスキーとアイルランドの流れをくんだアメリカのバーボンはwhiskeyと表記します。後者にはeが追加されるのです。
海沿いの街で強い潮風に吹かれながら醸造され、シェリー樽の中で長い年月を経てようやく奇麗な琥珀色へと変貌を遂げるスコッチウイスキー。まさにスコットランドの苦難の歴史と独立への渇望、スコッツの忍耐強い気質を反映したかのような「命の水」のロマンに当時大学3年生だった私は完全に魅せられたのでした。
スコットランドにいた頃はいくつか蒸留所を巡りましたし、仲間たちとしっぽり語らうときによくウイスキーを飲みました。以後、折に触れて愉しんでいます。
決してお金がある訳ではないのですが(汗)、私は時計や車に興味が無く、豊かな時間や経験にはということでたまーの贅沢にウイスキーを飲みます。
バーボンとは?
(ウッドフォードリザーブ蒸留所にてバーボンとチョコレートのマリアージュを学ぶ)
みなさんはウイスキーと聞くとどんな銘柄を想像されますでしょうか?言わずと知れた山崎、余市、タリスカー、マッカランなどでしょうか?
実はバーボンもウイスキーの一種、世界5大ウイスキーとされる「アメリカン・ウイスキー」に属するのはご存知でしょうか?
バーボンの特徴
バーボンには大きく5つの特徴があります。
- アメリカ国内で製造されている
- 原料の51%以上にトウモロコシが使用されている
- アルコール度数が80度 (80% ABV)以下になるよう蒸留されている
- 内側を炭化させたホワイトオークの新樽を用い、アルコール度数62.5度以下で2年以上熟成されている
- 蒸留後には水以外のものが加えられていない
尚、51%のトウモロコシの他に大麦や小麦、ライ麦といった穀物類が原料として使われています。
ほかのウイスキーと比べて熟成が早く、また焦がしオークが与えるバニラやカラメルといった香りが強いことも特徴ですよね。例えば最低10から12年程度じっくり熟成に時間をかけるスコッチとは全く異なりますよね。
なぜバーボンはケンタッキーなのか?
(ウッドフォードリザーブ蒸留所のVisitor Center受付。ディスプレイ、ライティング共に統一感があって美しい)
バーボンの歴史=アメリカの歴史?
結論から言うと、バーボンの歴史はアメリカの歴史そのものでもあります。
実は余った穀物、なかでもライ麦を原料としたウイスキー作りは早くから行われていました。スコットランドから大西洋を渡った移民を中心にペンシルベニア州やメリーランド州で造り始めたとされています。
転機となったのは1775年から1783年まで起こった独立戦争。そして独立戦争から数年後の1791年、当時のジョージ・ワシントン政権は国の負債低減、財政の立て直しを名目としてウイスキー税を導入しました。
すると同年1791年、この課税に反対した農民たちがペンシルバニアで反乱を起こします。ウイスキー反乱 (Great Whiskey Rebellion)と呼ばれるものです。(アメリカなのでeが入りますね。) 結果的には軍隊により反乱は鎮圧されたのですが、この反乱がまさしくケンタッキー州、バーボンの命運を分ける分水嶺となりました。同世代の方はお分かり頂けると思うのですが、まさに「その時歴史が動いた」時点です。
税金の支払いに納得できない農民たちは川を下って南下、ケンタッキー州やテネシー州に移住してウイスキー造りを開始します。するとそこには豊富なトウモロコシや蒸留酒づくりに適した石灰岩の多く鉄分のない硬水があり、そこからバーボンウイスキーが誕生することとなりました。
辛い生活の中にも希望を見出し、新天地で活躍した彼らの姿。バーボンとは正にアメリカの歴史そのものを体現したようなお酒だと思うと、今後の愉しみ方も変わりますよね。
バーボンの歴史
上記で軽く説明したような歴史や背景をもっと詳しく知りたい、学びたいという方にはこちらの書籍がおすすめです。良書なので併せてご紹介しておきますね。是非バーボンを飲みながら読まれてください。バーボンをもっと愉しく飲めると思います。
酒造施設を核としたツーリズム
(ウッドフォードリザーブ蒸留所。酒造施設を核とした観光開発が一目瞭然の案内図)
さて、世界各地で酒造施設を核としたツーリズム、観光開発が進められています。例えばワインだとフランスのボルドー、アメリカのナパ、日本の山梨なんかが有名ですよね。
このような酒造施設を観光資源として有効活用する事例はワインに留まらず、ウイスキー業界でも見られます。私がかつて留学していたスコットランドでは首都エディンバラを起点とした蒸留所を訪ねるツアーはもちろんのこと、海沿いなどに立地する遠方の蒸留所近くにも宿泊施設が多く、蒸留所を軸とした観光開発が進められていました。
ケンタッキーのバーボントレイルとは?
(ジムビーム蒸留所にてバーボンの蒸留、熟成について学ぶ)
アメリカのバーボン蒸留所も例にもれず観光開発を進め、蒸留所が集まるケンタッキー州では蒸留所と連携して1999年から「バーボントレイル」を開始、今では多くの観光客が訪れる観光資源となっています。
参考までに昨年2019年のバーボントレイルを訪れた観光客は170万人を超えたのだとか。2016年の参加者は88万人とのことなので3年で2倍ですね。凄い勢いで伸びているのがわかります。
その位アメリカではバーボンの消費が好調なんですね。
最後に
今回はここまで。私自身がトレイルで学んだ知識の復習も兼ね、前知識をざーっとお話ししました。
さて、次回からはいよいよバーボンの蒸留所をご紹介しますよ。お楽しみに!
8年も前の記事ですがスコットランドのオーバン蒸留所を訪れた際の記事が残っていました。スコットランドの蒸留所の雰囲気も知りたいという方は併せてどうぞ。
オーバン蒸留所訪問 – 命の水、ウイスキー
オーバンはゲール語で「小さい湾」を意味し、アイランズ地方への玄関口としても知られる。真っ先に向かったのは、200年以上前からこの街でシングルモルトを造り続けてきたオーバン蒸留所。海沿いの街で強い潮風に吹かれながら造られるスコッチウイスキーは、まさにスコッツの気質を反映しているかのよう。
最後までお読み頂き、有難うございました。
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