Warby Parkerのメガネを購入してみた – 何がユニークか?
少し前に以下のようなツイートをしました。
そういえば、最近アメリカで人気のあるWarby Parkerで眼鏡を買った。UPenn Wharton Schoolのベンチャー養成プログラムで出会った4人が2010年に創業したビジネス。ビジネスモデルも、訴求している社会的価値も面白いので棚卸中です。追ってブログ更新予定です~ #warbyparker
— Takafumi Inoue / 井上貴文 (@iraburian) December 2, 2019
この記事ではアメリカ生活の中で素敵なだと思った、Warby Parkerというアイウェアブランドについてご紹介したいと思います。
私のこのブランドとの出会いは、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)在籍時、友人と起業について話し合っていた際に彼から面白いビジネスモデルがあると紹介されたことでした。
このWarby Parkerには以前ご紹介したフィットネス・アプリSweatcoinとも類似している点があって、それはシェアすることの価値をadvocateしていることです。
では、早速見ていきましょう。
Warby Parkerとは?
Warby Parkerはアメリカはニューヨークで2010年に創業したアイウェアブランドで、ファッショナブルなアイウェアをリーズナブルな価格帯で提供しています。
$90-$300がおよそのレンジで、日本のJinsやZoffをイメージして貰えれば分かりやすいかと思います。
アメリカでは眼鏡は決して安い買い物ではないことから、旧態依然とした業界構造、競合のビジネスモデルにモノを申した、そしてブレークスルーを見出したということで、この数年ミレ二アル世代を中心に急速に人気を得ています。
尚、Warby Parkerはユニコーン企業としても知られ、現在の企業価値はざっくりと$2-3bnくらいで見られているようですね。このあたりはググれば諸々の情報が出てくるので割愛しますね。
また、これは完全な余談ですがデザイン界隈では眼鏡をかける人がやはり多いです。GSDも、今の勤め先の都市計画・デザインファームのSasakiでもそうで、隣に座っているLA出身の上司もWarby Parkerの愛用者です。
Warby Parkerの何がユニークなのか?
ここでは私がユニークだと考える3つのエッセンスについて深堀りします。
- 革新的なD2Cビジネスモデル
- おかしいことにおかしいと言う: Rebellious Spirit
- 買うことで社会貢献できる仕組み: Buy a Pair, Give a Pair
以下、一つずつ見ていきたいと思います。
革新的なD2Cビジネスモデル
まず初めに、皆さまはD2C(Direct to Consumer)という言葉をご存じでしょうか?D2Cとはメーカーが直接顧客と接点を持ち、売買取引がなされるビジネスモデルです。このモデルの何が革新的かというと、従来必要とされた仲介業者が不要になり、流通過程におけるコスト削減が実現することにあります。これは顧客サイドからすると、商品を安価で購入することが可能になるということです。
Warby Parkerは仲介業者を排除、加えて設計、マニュファクチュアリングをインハウスで行うことで安価でのアイウェアの提供を可能としている、D2Cビジネスの先駆とも言うべき存在です。5フレームまでは自宅で無料試着が可能(5日間まで)で、ウェブサイトから試着依頼が簡単にできます。
尚、Amazonなどの大手デジタルプラットフォーマーの台頭もあり、アメリカでは多くのブランドや企業が顧客との直接の接点を確保するためにD2Cへの移行を加速しています。
こういった時代の流れが示唆しているのは、ただ単にモノを右から左に流してマージンを取るプレーヤー・事業形態は今後加速度的に淘汰されていくということだと思います。例えば商社の中でも、バリューチェーンに絡むことで付加価値を提供できるプレーヤーは残るでしょうし、そうでない企業は淘汰されていく。これは時代の流れだなと感じています。
尚、デジタル時代の企業の生き残り方、攻め方なんかについてもっと勉強されたい、興味があるなんて方には以下の書籍をおススメします。MIT、Sloanの先生が書かれた良書で、今何が起きているか、即ちBig Pictureを持つには持ってこいです。
おかしいことにおかしいと言う: Rebellious Spirit
Warby Parkerはウェブサイトの中で、以下のミッションを掲げています。
“Warby Parker was founded with a rebellious spirit and a lofty objective: to offer designer eyewear at a revolutionary price, while leading the way for socially conscious businesses.”
Warby Parkerウェブサイトより引用
彼らの言うRebellious SpiritはD2Cモデルの採用、仲介の排除等に体現されていますが、そもそもは創業者の原体験から来ているようです。
創業者の一人は学生時代のバックパッキング中に眼鏡を壊してしまったものの、修理代が高く学期を眼鏡なしで過ごしたとのこと。彼はその原体験からアイウェア業界構造に興味を持ちリサーチを開始、すると業界は1社の独占状態にあり、価格は人為的に高価格帯に設定・調整されていることに気付きます。
そこでこの問題に対峙するため、また、より消費者に寄り添ったサービス・プロバイダーとなるために、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのベンチャー養成プログラムの同期たちとWarby Parkerを設立するに至ります。
ビジネスモデルを少し因数分解してみると、背景には創業者の既存社会の問題への問いかけ、そしてそれらを変えたいというベンチャー・スピリットがありました。
「おかしいことにはきちんとおかしいと言う。」
この姿勢、メンタリティーこそが、ミレ二アル世代を中心に大きな支持を得、Warby Pakerが急成長している理由だと考えています。
買うことで社会貢献できる仕組み: Buy a pair, Give a Pair
冒頭でも少し触れましたが、Warby Parkerのビジネスモデルには「シェア」、「ギブ」の概念がビルトインされています。
Warby Parkerのウェブサイトによると、世界の約25億人の人々が眼鏡を必要としているにも関わらず、手に入れることができていない現状があるそうです。また、そのうち約6億人は効果的な学習や労働に支障をきたすレベルとされているとのこと。
Warby Parkerは「誰にでも見る権利がある」という信念のもと、上記の課題解決に向けて“Buy a pair, Give a pair”という活動を展開しています。この活動は、文字通り顧客が購入する1つの眼鏡に対し、Warby Parkerが途上国で眼鏡を必要としている人に向けて1つの眼鏡を寄付する仕組みです。
もう少し踏み込むと、彼らの”Buy a pair, Give a Pair”では、パートナー団体を通じ、途上国の男女に簡単な視力検査の実施方法を教育し、彼らが将来的に現地の人々に安価な価格で眼鏡を販売するサポートも提供しています。
単に眼鏡が無いという問題をダイレクトに解決するのみならず、その背景にある不安定な収入、雇用機会という問題にもきちんとアドレスしている点が非常にユニークかつ素晴らしいと個人的には感じています。
私も現在アフガニスタンでの都市計画・デザインに従事していますが、引き続き人口が増加傾向にある途上国では安定的な収入源、雇用機会の創出は急務です。
「個人でありながら広い世界と接合する」
「個人でも世界、社会のために少しでも貢献できる」
こういったバリューに共感する層を中心にWarby Parkerの人気は高まってきているということだと思います。
お洒落な眼鏡も比較的安く手に入れることができ、かつ社会貢献も出来るのですから納得ですよね。
(ご参考) 購入してから届くまでのスケジュール
以下は、私が店舗で購入してから実際に手元に届くまでのタイムラインになります。
購入から1週間で手元に届きました。個人的にはいい速度感かなと思います。尚、リアルショップ(実店舗)で購入しても持って帰ることは出来ません。
2019年11月16日
眼科で視力検査をし、診断書を持ってWarby Parkerのお店へ。眼鏡をオーダー。
顔の形に合わせてフレームの調整を依頼
2019年11月18日
加入している保険が眼鏡購入代の約半分を負担してくれるのでReimbursementを申請(オンラインで申請後、郵送)
2019年11月23日
Warby Parkerからオーダーした眼鏡が届く。ボックスのデザインもシンプル、色もネイビーとブランドカラーの水色で構成され洗練されている(上記写真をご参照ください)
2019年11月25日
加入先の保険会社からCheckが届く
以上、今回はアメリカ、特にミレ二アル世代の間で人気なWarby Parkerという眼鏡ブランドについてご紹介しました。
まだ日本での展開は無いようですが、アメリカにお住まいの方、これからアメリカに来られる方でブランドのミッションに共感される方は試されてみてはいかがでしょうか。
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