京阪神の文化・集客施設を可視化、集計してみた

アーバニズム


神戸・三宮、西宮、梅田、京都・・・。いわゆる京阪神と呼ばれるエリアで青春を過ごした一人の関西人(正確には阪急沿線で育った人間)としての純粋な興味から、趣味程度に京阪神の文化施設、集客施設を可視化してみたのが上記の図になります。仕事と仕事の合間の隙間時間に遊び程度にやっているものなので、荒い所もありますがご容赦ください。

ピンク色の小さなドットが文化施設、黄色のそれが集客施設になります。白色の線は鉄道網で、こうして可視化してみると改めて関西圏の鉄道網の凄さに圧倒されます。

可視化して見えてきたのは、やはり梅田、神戸、河原町周辺には文化・集客施設が集中しているということです。反対に、鉄道網がリーチできない地域にはピンクや黄色のドットは余り存在していないようです。ここで以下の仮説を立ててみたいと思います。

仮説を立てる

鉄道網が整備されている関西圏では、駅近くに文化・集客施設が集中する傾向にある

尚、都市計画用語では公共交通機関を基盤とした脱自動車社会を目指す都市開発をTransit Oriented Development(通称TOD、日本語では公共交通指向型開発)と呼び、同概念は都市計画家のピーター・カルソープによって提唱されました。実を言うと、このTODの分野において日本はかなり先駆的な動きを果たしており、成功している事例が多く、ハーバードでもよく参照されていました。

例えば、関西圏で皆さんに馴染みの深い阪急電車。阪急電鉄は、小林一三のリーダーシップのもと、梅田や神戸・三宮といったターミナル駅への商業重点化策(関西のおばちゃんがよくいう”デパート“ってやつですね)、そしてそれらを繋ぐ沿線、そして沿線の宅地開発と複合的な都市開発を先導しました。今の関西圏の公共交通の利便性があるのは、まさにこういった先人たちの先見性、努力あってこそなのです。とりわけ、青春時代、酸いも甘いもたくさんの思い出を運んでくださった阪急電車、電鉄さんには心から感謝しています。(決して回し者ではありません。笑)

尚、この「デパート」という言葉には、戦後焦土と化した混沌の中から復興を成し遂げ、ミラクルと呼ばれた経済成長、そしてバブルへと向かっていく中で生まれた新しい生活スタイルへの憧れのようなものが見え隠れし、なんともノスタルジックかつ野性的な響きがあって個人的には大好きです。人間の生に対する渇望というか、希望を目指して混沌から立ち上がっていく強さのようなものが感じられるからでしょうか。「今の梅田駅前ビル群があるところも、戦後は何もなく、闇市ができてそこから・・・」なんて話を母親から聞かせてもらったものです。

仮説を検証する(分析)

話がそれてしまいました。「鉄道網が整備されている関西圏では、駅近くに文化・集客施設が集中する傾向にある」との仮説を検証するために、関西2府4県における鉄道駅から徒歩5分、10分、15分圏内にどれだけの施設が存在するかを分析してみます。尚、都市計画・デザイン界では400m、800、1,200mをそれぞれ徒歩5分、10分、15分とするのが慣習ですので、同様の手法を用います。下記の図内、白い鉄道網から広がる青い円が徒歩圏内を示しています。

各徒歩圏内に存在する施設数を分子、全体の施設数を分母として計算します。詳細の分析、計算等の説明は省きますが、以下のような結果となりました。

文化施設

わかったこと

大阪、京都、兵庫が1,000を超える文化施設を有するが、大阪のみ突出している

大阪では各鉄道駅から徒歩5分圏内に22%の施設(412施設)、15分圏内に73%(1,354施設)の施設が存在しアクセスしやすい

施設総数と駅近くに施設が存在する割合には強い正の相関あり(例として、施設総数と駅から徒歩5分圏内の施設数の相関係数は0.99)

メディアではよく神戸や京都が文化的な都市だとされがちですが、ビジュアル、数値が語った事実は「大阪こそ文化的施設へのアクセスが一番ある」というメッセージです。尚、大阪をよいしょしているように聞こえるかもしれませんが、私は兵庫県出身ですのであしからず。笑

集客施設

わかったこと

兵庫、大阪、奈良が施設総数では上位3位

駅からの施設へのアクセスしやすさでは大阪が第1位

施設総数と駅近くに施設が存在する割合には強い正の相関あり(例として、施設総数と駅から徒歩5分圏内の施設数の相関係数は0.84)

商業の都としての大阪のイメージが強かったので集客施設数は大阪がトップ、文化施設は兵庫か京都だろうと思っていましたが意外にも反対なんですね。ご覧の通り、施設へのアクセス性では大阪がダントツの一位ですが。さて、2050年、2100年、3000年の地図はどうなっているのでしょうか。そんなことを考えるとワクワクします。

尚、詳述はしませんが、文化施設では駅から離れるにつれて正の相関関係が弱くなった一方、集客施設では正の相関関係が強くなる傾向が見られました。これもまた面白いですね。

まとめ

見えないものを見えるようにする。とまではいかなくても、見えにくいものを見えやすいようにできれば色々な面白いことが見えてきます。そして必要に応じて様々な対応策を考えることができます。これこそデザイン、ビジュアライゼーションの力だと考えています。デザインは新規性やクリエイティビティと同義に捉えられがちな昨今ですが、私はハーバードGSDでデザインとは問題解決の手段・ツールであるということを徹底的に叩き込まれました。

今後も時間があるときに、趣味程度にデータビジュアライゼーションを続けていければと思います。

出典・備考等

出所:国土地理院、国土交通省、BBBike等のデータを基に当ブログ管理人である井上が作成。尚、文化施設は2013年度のデータ、集客施設は2014年11月30日時点のデータを使用。

それぞれの施設の定義の詳細については国土交通省のwebをご覧頂ければと思いますが、以下簡略版を記します。(2019年6月13日国土交通省web確認)

文化施設:全国の文化的に価値のある作品や生き物を収集・保存・展示し、またそれらの文化に関する教育・普及・研究を行う施設

集客施設:アトラクションや展示会など催事が開催できる空間(部屋)を有する施設及び興業、スポーツなどが観覧できる「観覧席」を有する施設など、交流拠点の形成や周辺の地域資源を加えた「交流ゾーンの拠点」となる施設

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