「Do what you love.」 と「Love what you do.」

雑記


地中海貿易。当時栄えた街の様子やそこに暮らした人々。
乏しい想像力を結集させて昔のことを思い浮かべてみた。

教科書でしか見たことのない街が、今目の前にある。
そう思うと胸が熱くなって、勘違いしたのか、自分の前世はヴェニスの商人だったなどという錯覚を起こす。
そんなことはまるでない。

からりと晴れた青空の下、色んな人々の思いを乗せたヴァポレットがカナル・グランデを進む。

向かいから名物のゴンドラがやってくる。
ゆっくりと、けれど確実に進んでくる。
すれ違い様、シャンパンを片手に談笑する老夫婦がこちらを見てにこりと微笑んだ。

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サン・マルコ広場に着いた。水の都ヴェネツィア、思っていた以上に広かった。

外敵の侵入を防ぐためとはいえ、よくも干潟の上にこれだけの生活圏を形成できたものだと感服した。

広場を歩いていると一人の老紳士に出会った。
なんでも無い、ちょっとした出会い。
でもそういうのが意外と好きだったりする。

年代すら予測できない古びた手動のカメラ。彼にとっての宝物。
その宝物で戻ることのない一瞬を切り取ろうとする彼を見てしばし考え込む。

Do what you love.」と「Love what you do.」。

レンズを付け替えたりがさごそやっていたので気付いたのか、彼がこちらをちらりと見やってウインクした。
相変わらずヨーロッパの紳士はウインクが上手い。それも憎いほどに。

あの老紳士のカメラのレンズの奥にはどんな世界が広がっていたんだろう。
彼は何を見ていたんだろう。

かつて恋をしていたハイネは言った。

妃の綺麗な瞳の中に わしの広い広い国がある。

恋人でも、学問でも、料理でも、運動でも、社会貢献でも、仕事でも。

Do what you love.」と「 Love what you do.」。

Life is too short.

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日が沈み、街灯が灯り始めた。
蛇の背中のように入り組んだ路地を歩く。

時折風が運んでくるアドリア海の塩の匂いで、自分が水上都市の上を歩いていることに気付いてはっとした。

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