アメリカで就職を目指す方へ – 英語での給料ネゴの方法

アメリカ


アメリカ現地就職活動では、オファーが出た後に給与交渉をするのが一般的です。

私もオファーを頂いた数社との間でこのプロセスを経験しました。
今回はアメリカで給与交渉がなされる背景、どう乗り越えていくべきかといったことをシェアできればと思います。

日本で外資系等に転職を検討している方の参考になる部分もあるかと思います。

そもそもなぜ給与交渉をするのか?

理由はいたってシンプルで、最初から高いオファーを提示する雇用主がそもそも存在しないからです。採用側としても高値掴みはしたくないと考えるのが普通だと思います。

アメリカでは、「雇用は契約であり、かつ人材はReplacable (即座に交換・調達が可能)である」との認識が強いため、オファーレターに記載の給与は基本的には低く提示されていると考えて間違いないです。

求めるポジションでの人材採用、即座の実戦配備。
これがアメリカ労働社会の基本原則です。
実際に私の周りでも人材の流動性は高く、解雇も日常的にあります。

喉から手が出るほど欲しい優秀な人材であれば、最初からある程度のオファーを出す雇用主も勿論いるとは思います。しかし、ほとんどの場合は雇用主の考えるオファーのレンジ下限でスタートとなります。

尚、上記のような雇用は契約であるとの認識、かつ個人主義が強いアメリカでは雇用主と従業員の関係はかなりドライです。
日本のような、入社した人材を大切に育てていくというカルチャーは希薄です。

また、「労働は自分の人生、あるいは家族や大切な人たちとの時間を豊かに過ごすために必要な金銭的手段を得るための手段」という認識が日本に比べて強いように感じます。

話はそれてしまいますが、日本に比べアメリカの方が圧倒的に労働時間は少ないです。ランチもバケーションもきちんととりますし、金曜日なんて朝から週末モードで退社も早いです。そんな中でもアメリカの経済が強い理由の一つは、適材適所の人材の採用と配置にあるのだと思います。

そんな特性を持つマーケットですので、個人が自分自身の付加価値、強みを能動的に売り込んでいくこと、即ち給与交渉が必要になるのです。

そもそも論として、給与交渉もろくに出来ないような人材が将来会社に案件、人材、その他のリソースを引っ張ってこれるわけがないということなのだと思います。これは雇用主の立場に立って考えてみると当然で、給与交渉は人材の将来のビジネス・ポテンシャルを見抜くリトマス試験紙の役割を果たしていると言えます。

給与交渉に求められる3つの能力

給与交渉で主に求められるのは、リサーチ力、ストーリー力、そしてピッチ力の3つです。以下、一つずつ見ていきます。

リサーチ力

そもそも、給料というのは個人の市場価値を数値化した一つの指標です。
ですので、給与交渉をするには、自分が働くことになる業界やポジションの給料の相場を知ること、そして自身の市場価値を把握することが必要です。

まずは、大きなマクロトレンドを把握することから始めましょう。
アメリカの職業、分野毎の給料の相場を知るにはGlassdoorというサイトがおススメです。
このサイトは、様々な業界、組織に属する人から匿名で給料の情報を集めているポータルサイトで、私のハーバード大学デザイン大学院時代の友人の多くもこのポータルを使用していました。

進む業界や勤め先に知り合い、あるいは大学、大学院時代の同窓生がいるのであれば、彼らにフランクに聞いてみるのも有用です。

様々なリソースを駆使し、自分を1つの商品と見立て、現時点での市場価値を調べましょう。この時、同業他社等との比較も忘れないようにしてください。

ストーリー力

おおよそのリサーチが済んだら、「なぜあなたは私を採用すべきなのか?」「なぜ私は提示されたものより高い給料を貰うべきか?」という物語を構築するステップです。

言わずもがな、市場には競合者が存在します。もちろん、オファーを貰えたということは、彼らよりも付加価値が高い、あるいはフィットするだろうと雇用主が認識していることを意味します。

しかし、上述のようにアメリカでは基本的に人材は流動的で即座に代替することが可能であるとの前提に立ちます。そこで、交渉にあたって改めて自分の強み、付加価値を精査し、相手に効果的に伝えることが大事です。

リサーチを通じて業界の採用環境や自分の立ち位置を把握したら、競合等のコンプス対比どれだけのプレミアム(付加価値)が自身にあるのかを考え、相手が納得できるストーリに仕立てる力が求められます。

ピッチ力

リサーチをし、描いたストーリーを売り込む力です。すなわち、自分という商品を、雇用主というお客様に営業・ピッチする力です。

シンプルでありつつも、相手を共感させ、「採用したい、この人材であればこれだけ払ってもいい」と思わせるだけのダイナミックな営業力が必要です。
前述の通り、給与交渉力は採用主にとって将来の営業力のポテンシャルをはかるリトマス試験紙であることを念頭に置き、ピッチをしましょう。

私は、投資銀行部門で新卒キャリアを積ませて頂いたことを本当に幸せなことだと考えています。社会人としてのいろはに加え、分析のフレームワーク、そして相手が共感してくれる物語を描き、ピッチする力・売り込む力を徹底的に叩き込まれました。
お客様や上司をはじめとして、前職でお世話になった方々には感謝してもしきれません。

給与交渉の実例

長くなってきましたが、ここでは私が使用したメールのテンプレを公開します。
最後のセクションですので、もう少しお付き合いください。

オファーは電話かメールで知らされることが多いです。私の場合はどちらもありました。

電話でオファーを受領した場合は、まずは感謝を伝え、少しの間考えさせて欲しいと伝えます。ここは心理戦です。
もちろん、こちらに他者には無い付加価値・強みがあること = ある程度の交渉力があることが大前提ですが。

電話、メールのいずれでオファーを受け取った場合も基本的にはメールでカウンターを出します。というのも、上記で記したようにマーケット情報等、いくつか資料を添付する必要があるからです。

私の場合は、次の2つの資料を添付しました。

  • ボストン界隈でのアーバンプランナーの平均給与
  • ハーバード大学デザイン大学院修了後のアーバンプランナーの1年目の平均給与

以下、私が実際に給与ネゴで使用したメールを参考までに公開します。尚、これは一度交渉し修正したオファーレターを受領した際に、再度カウンターを出したものです。

私の場合は、簡潔に自身の付加価値を説明し、大胆な中にも丁寧さを感じさせる文体にするよう心掛けました。
尚、希望する給与はポイントではなくレンジで提示しましょう。これ、重要です。

Hi xxx,
I really appreciate your hard work on the updates for the offer letter. However, I do believe that my contributions will be more valuable to the company. I will be able to accomplish A and B (あなたが達成できることを記載) by leveraging C (あなたの強み、提供できるバリューを記載).

I am attaching salary data for graduates of my program, as well as a salary search of comparable positions. Based on these numbers and my qualifications, is there any possibility we can move closer to a starting salary range of $xxx-$xxx (希望給与はレンジで提示)?

I am happy to chat on the phone and available D (向こう1週間で電話が可能なスロットを記載).
Thank you so much indeed in advance!

Best,
Your Name

以上、アメリカ現地就職における給与ネゴについて考えました。
かなり長くなってしまいました。汗

読んでくださった方々は、最後までお付き合い頂き有難うございました。

尚、交渉術や交渉論、あるいはエレベーターピッチ等についてご興味のある方、もっと深堀したいという方は以下の書籍なんかがおススメですよ。


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