ハーバード大学の音楽練習室 – 大学全体でピアノが220台?
こんにちは、Takaです。
私はデザイン大学院(GSD)の修了生ですが、在学中にはたまに息抜きで音楽学部の練習室に足を運びピアノに触れていました。というのも、この音楽練習室はハーバードの有効なIDを持つ人であれば誰でも無料で使えるのです。
ピアノは趣味で弾く程度ですが、やしきたかじんと上田正樹というディープな関西人の名曲をハーバードで弾いたのはおそらく私が初めてだろうと思います。笑
(記事後半に演奏動画も乗せています。)
音楽学部以外の人には意外と知られておらず、ネット上でも練習室の詳細情報は見当たりません。そこでこの記事では、ハーバード大学の音楽練習室についてご紹介したいと思います。現在はコロナで練習室も閉鎖しているので、私が最後に訪れた3月初旬での情報だと考えて下さい。
ハーバード大学音楽学部の練習室
以下、音楽学部内にある練習室の主要情報をまとめました。
- 場所: ハーバード大学音楽学部内
- 練習室数: 15室(うち14室にピアノあり)
- 利用可能者: 有効なハーバードID保持者
- 利用料金: 無料
- 利用可能時間: 1回あたり2時間(first come, first served)
- 利用時間(平日): 午前8時半~午後11時
- 利用時間(週末): 午前10時~午後10時
- 禁止事項: 練習室でのレッスン
練習室ではピアノのみならず、バイオリンやフルートを弾く人、チェロやサックスとセッションを行っている人など色々います。音楽学部の生徒さんが多いのだとは思いますが、GSDの友人もそれなりに利用していました。
15室ある練習室のうち14室にピアノがあります。情報は開示されていませんが、2020年2月に訪れた際にざっと見まわしてみました。その時点では10台がグランド、4台がアップライトでした。グランドはほぼSteinway(スタインウェイ)です。尚、アップライトはYAMAHA(ヤマハ)、うち一台はスタインウェイ設計の「ボストン」モデルだったと思います。
私がGSDに在籍していた2016年8月~2018年5月まではずっと同じピアノで、チェコのペトロフやチェンバロもあったように記憶しています。なので時折入れ替えがあるのだと思います。
尚、ハーバード全体では60の建物に220台のピアノが置かれているようです。学部、大学院にエクステンション・スクールを加えると学生数は約3万6,000人なので、単純計算だと約160人に一台ピアノがあるイメージですね。
Mason & Hamlin – 幻の名器
Mason & Hamlin(メイソン・アンド・ハムリン)はアメリカではニューヨーク・スタインウェイに次ぐ名器、高級ピアノとして知られているようですが、日本には数台しか存在しないとのこと。私みたいな素人には分かりませんが、日本ではその希少性から「幻の名器」と呼ばれているようです。
Webを見ると、1854年ボストンで操業したメーカーで1880年頃からピアノの生産を開始したようです。今でも全てが手作りで生産されていて、それがために生産台数が年間300台と少なくアメリカ外には余り出回らないようです。ちなみに工場はマサチューセッツ州のヘイバリルにあるようです。
私がGSDに在籍していた2016-18年にはメイソン・アンド・ハムリンのグランドピアノが3台程ありましたが、今はおそらく一台だけだと思います。初めて触ったとき、その艶っぽい音色に魅せられ、以来好んでメイソン・アンド・ハムリンに相手をして貰いました。今となっては良い思い出です。
GSDにもピアノ?
実はGSDのGund Hall内1階にも1台グランドピアノがあります。建築家でGSDの教授でもあるJorge S. Silvettiによる寄付で、生徒、教授やスタッフ誰でもが使えます。
課題に追われる日々でしたが、私自身も誰かの弾く優しいピアノの音色に癒されていたように思います。GSD2年次、私のデスクは最上階の5階にありましたが、Gund Hallの吹き抜けの構造上、奇麗なピアノの音がデスクまで聞こえました。
お気に入りのピアノ3選(2020年3月時点)
以下では、私のお気に入りの練習室をご紹介します。
完全な好みですがご容赦ください。笑
Room 32 – Mason & Hamlin(グランド)
ウォルナットのメイソン・アンド・ハムリン。まろみのある音色を出してくれます。
Room 26 – Steinway(グランド)
こちらはウォルナットのスタインウェイ。鍵盤の軽さはもちろんこと、反応も非常に良い一台だったように記憶しています。
Room 33 – Steinway(グランド)
こちらは黒のスタインウェイ。ご覧の通りすっかり年季が入り、弾き心地は良いとは決して言えないのですが、その円熟さが魅力的な一台。
音楽の持つ力
演奏するしないに関わらず、音楽は人の心を豊かにしてくれますよね。
以前他の記事でも書きましたが、デザインスクールの忙しさは徹夜等もあり想像を超えます。というのもエッセイを書く課題はもちろんのこと、デザイン課題もあるからです。他のスクールの友人たちと話していても、2-3倍の課題量をこなしている感覚でした。汗
自炊をする時間も余りなく、昼はカフェテリアで買ってデスクに戻り、夜はデリバリーを頼んで夜中に学校を出る生活が普通でした。そんな生活なのでストレスもかなり多く、ストレスを溜め込んでいては心身の健康を損なうという危惧がありました。
幸いにも音楽学部の練習室はGSDから徒歩5分程の所にあったので、たまにGund Hallを抜け出してピアノを弾きに行き、また戻って夜中まで課題という生活をしていました。(もちろん弾けて週1-2回とかのレベルでしたが。)
やり直しのできない一瞬一瞬に向き合う
PCでマウスをいじれば簡単にデザインが修正できてしまう。当時の私は毎日そんな環境下にいたので、「やり直しのできないもの」を必然的に求めていたのだと思います。
もちろん演奏は何回だって出来ますが、同じ演奏は二度と出来ません。一回一回に乗せる感情も違えば、能力不足、集中力の欠如からテンポもバラバラ、ミスタッチも多発ということがざらにある。だからこそ感性、集中力を研ぎ澄まして目の前にある「やり直しのできない一瞬一瞬」に向き合う必要性に迫られるのだと思います。
ともすればいとも簡単に「編集」や「修正」で全てがやり直しできてしまう時代。人間関係も含め、「世の中にはやり直しの利かないものもある」ということを全身で感じ、自らの心と頭のバランスを取ろうとしていたように思います。
これは都市づくりに関わる人間にとってとても重要なことだと考えています。例えば建物や高速道路などのインフラは一度作ってしまったら中々その構造は変更できませんし、場所だって変えるのは難しいですからね。だからこそ持てる限りのナレッジとスキルで向き合い、その時々の最適解を出す努力が求められると考えています。
もちろん都市は人がいてこそ成り立つ有機体ですから、常に変化しています。必要に応じて修正や手を加えていくことも必要です。但し一番初めの「つくる」段階においては、ピアノと同じように「やり直しのできない一瞬一瞬」と対峙する真摯な姿勢が求められると考えています。
ふと思いましたが、私の目の前の一瞬へのこだわりは映画『いまを生きる』の影響が大きいのかもしれません。中学で初めて見て衝撃を受けて以来、大学学部を出るまでの多感な学生時代、何度となく繰り返しては観、洋書も何度も読み返しました。個人的には知らない方は人生損していると思うくらいの作品ですので是非。また、昔観たことがあるという方も「おうち時間」に久々に観られてはいかがしょうか。きっと心が若返ると思います。
ひとりの時間 – 内省とストレス解消
私は昔からひとりの時間を大切にしているのですが、小一時間でも雑音の無い練習室に入って自らの心と向き合う時間はストレス解消になっていました。
私は小さい頃はピアノは全く練習せずで、大人になってから趣味でたまに弾く程度です。もちろん音楽理論なんてやってませんし、コードも分かりません(汗)。でも好きなことは何歳から始めても遅くなく、コツコツと練習していく内に上達していくことが案外嬉しかったものです。
投資銀行から都市計画・デザインと大きく舵を切った私は毎日学校でこてんぱんにされていました。
「下手くそなピアノでも努力を重ねれば力がつくのだから、都市計画・デザインも努力の積み重ねだろう。」
振り返れば、当時はそんなことを感じながら、無意識のうちに自身の中にある種の「自信」を築こう、取り戻そうとしていたのかもしれません。
おまけ
冒頭でも述べましたが、やしきたかじんと上田正樹の曲をハーバードで弾いたのはおそらく自分が最初だろうと勝手に思っています。笑
以下、演奏を載せておきます。3曲すべて2年以上も前の2018年2、3月に弾いていたみたいです。
下手の横好きに加え、全て耳コピなので間違っている箇所もありますがご容赦ください。汗
やしきたかじん – 大阪恋物語
「関西の視聴率男」と呼ばれ、テレビでは毒舌として有名でしたが、私は歌手のたかじんさんが大好きでした。一曲歌い終わる度にこれでもかという程の深いお辞儀をされる姿が印象的で、普段の彼とのギャップの中にたかじんという人の魅力、すなわちダイナミズムがあった気がします。
やしきたかじん – やっぱ好きやねん
大阪環状線の発車メロディとしても使われたりと、関西人には馴染みのある「やっぱ好きやねん」。女性目線で未練や恋情を唄わせたらこの人の右に出る人はいないのではないかなと思います。
未練を唄っているのだけれど、溢れんばかりの愛に心がじんわり温かくなる。
そんな曲だと思います。
上田正樹 – 悲しい色やね
3月の雪がしんしんと降る日にふと弾きたくなったこの曲。私は平成生まれですが、昭和の香りがぷんぷんするこの人間臭い感じがたまらく好きです。同じ世代の人には余り共感して貰えないのですが笑
そう言えばこの曲も男性が唄う女性目線の曲ですよね。ハスキーかつパワフルな男たちが女性目線でムーディーに歌い上げる美しいバラード。私が男性だからというのもあるのですが、そのギャップが好きなんですよね。夢ばかり見る男に惚れ、時を経て恋が終わっても尚「あんた」のことを陰ながら応援しているよという慕情も好きだったりします。
この時相手をしてくれたのは2018年当時あったメイソン・アンド・ハムリンのグランド。このピアノ、ハーバードに来る前は教会で長く使われていたと聞きました。
まるで人々の憂い、悲しみ、希望といった色々な感情を受け止め、包み込んできたかのような音色。100歳を超える年季の入ったピアノで、何とも渋い音を出してくれる私の一番好きな台でした。
2020年2月に1年ぶりに音楽練習室に行った際このピアノは見当たりませんでした。入れ替えにあたり、他の誰かのもとへ行ったのだろうと思います。きっとどこかで素敵な音色を奏でていることでしょう。
最後に
今回の記事は以上になります。
ハーバードに今後進学される予定の方は、是非息抜きがてら練習室を利用されてみてはいかがでしょうか?
最後までお読み頂き、有難うございました。
人気記事 アメリカのデザイン大学院留学 – 受験対策③TOEFL
人気記事 ハーバード大学デザイン大学院 (GSD) のアーバニズム教育